成人式は何歳で?~成年年齢の引き下げ

成年年齢を18歳に引き下げる民法改正法が成立

 

2019年がスタートし、今年も各地で成人式が行われましたね。
成人式といえば、これまでは20歳の節目でしたが…

2015年に公職選挙法が改正になり、選挙権年齢が18歳に引き下げられたのは記憶に新しいところかと思いますが、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる改正法も、昨年(2018年)6月に成立しました。2022年4月1日から施行されます。

と言っても、実生活上、具体的にどのような影響があるのか、今ひとつピンと来ない方も多いかもしれませんね。

民法上、未成年者が契約などの法律行為をするには、法定代理人(通常は親権者)の同意を得なければならず、これに反する法律行為は取り消すことができるとされています(民法第5条)。
法律行為って何?と思われるかもしれませんが、身近な例を言えば、お店で物を買う行為も法律行為にあたりますし、アパートを借りる、ローンを組む、英会話教室に入会する、なども全て法律行為です。
未成年者の場合、一般的に、取引の経験や知識が十分でなく、判断能力も未熟であることから、契約によって被る不利益から保護すべく、上記のような取消(未成年者取消)が認められているのです。

(但し、親から与えられた小遣いの範囲内で買い物をした場合等々、例外的に未成年者取消ができない場合もあります。未成年者取消の詳細については、東京都など地方公共団体のウェブサイトなどにも掲載されています。)

現行法下では、20歳未満の者が親の同意なく行った法律行為は取り消すことができますが、改正法により、18歳から成年者となりますので、改正法施行後は、18歳、19歳の法律行為を未成年者取消で取り消すことはできなくなります。

 

消費者被害の拡大が懸念される

 

このように、改正法施行後は、18歳、19歳は民法の未成年者取消規定の保護を受けられなくなるため、高額なクレジットを組まされて不必要な物品やサービスを購入させられる、といった消費者被害の拡大が懸念されています。

事業者は、相手が未成年者であれば、契約を締結しても後に取り消される可能性があるため、そもそも未成年者を勧誘しないのが通常ですが、改正法により成年者となる18歳、19歳は、事業者のターゲットにされる危険が高まると考えられます。
18歳、19歳といえば、高校を卒業して進学や就職で親元を離れる人も多く、それまでと違う生活環境の中で、悪質な事業者の勧誘を受けて、誰にも相談できないまま高額・不要な契約をしてしまう、といった事態も懸念されます。
改正民法成立にあたっては、消費者被害拡大防止のための施策の指針が盛り込まれた附帯決議も可決されましたが、十分な環境整備が望まれます。

 

女性の婚姻開始年齢は引き上げられることに

 

現行法下では、男性は18歳、女性は16歳にならなければ婚姻することができないとされており、未成年者が婚姻するには父母の同意が必要とされていますが、改正法により、女性の婚姻開始年齢は18歳に引き上げられることになりました。
よって、改正法施行後は、未成年者が婚姻するという事態は生じないことになります。
なお、経過措置として、施行日(2022年4月1日)時点で既に16歳以上の女性は、18歳未満でも婚姻できるとされています。この場合は父母の同意が必要です。

 

飲酒・喫煙・ギャンブルの年齢要件は20歳以上のまま

 

民法改正により成年年齢は18歳になりますが、飲酒、喫煙や、競馬・競輪・競艇・オートレースの投票券購入については、健康面への影響や非行防止、青少年保護の観点などから、20歳以上という現行法の年齢要件が維持されることとなりました。

 

養育費の支払終期への影響は

 

成年年齢引き下げに伴い、離婚する際の養育費の支払終期には注意が必要です。
従前、離婚する際に「子どもが成人するまで養育費を支払う」と約束していた場合、成年年齢が18歳に引き下げられることになったのだから、18歳まで支払えば終わりでは?と考える人が出てくるかもしれません。
しかし、養育費の取り決めをした時点では、成人=20歳という前提で決めたはずですから、20歳まで支払義務があると考えるべきでしょう。
また、現在でも、子が大学に進学する場合には、成年年齢にかかわらず、大学卒業まで養育費を支払うケースもあります。成年年齢が18歳に引き下げられても、養育費の終期については、子どもの具体的状況に応じて決めるべきと考えられます。

 

なお、現在(2019年1月)は改正民法施行前であり、成年年齢はまだ20歳ですが、今後、養育費を定めるときは、「成人になるまで」という表現ではなく、「××歳に達した後の3月まで」や「20××年×月まで」のように、具体的な年齢や年月で終期を明記する方がよいでしょう。

 

成人式はどうなる?

 

では、成年年齢が18歳になると、成人式はどのように変わるでしょうか。

この点は、特に法律で決まっているわけではなく、成人式を主催する各自治体の判断になりますが、18歳で成人式を行うとなれば、大学受験や就職活動の多忙な時期と重なってしまう事に加え、振り袖などの和装ではなく高校の制服で出席する人が増え、呉服業界への影響が大きいのでは、といった指摘もあります。

上記のような様々な影響を考慮し、既に、京都市や蕨市など複数の自治体が、民法改正後も現在と同様に20歳を対象に式典を行うことを表明しています。同様の自治体が増えるのかどうか、今後の動向が注目されます。

 

[弁護士 奥田聡子]

2019年1月15日 | カテゴリー : 法律コラム | 投稿者 : okudawatanabe